琉球開闢神話に登場する聖地『御嶽』。何人たりとも立ち入ることのできない久高島のフボー御嶽と、世界遺産として解放されている斎場御嶽に行って参りました。対極の状況にあるこの御嶽。もとは男子禁制の御嶽だったのです。女性であれば入れたフボー御嶽。男性だったら入れなかった斎場御嶽。それら二つがどのように今の状況になったのか見てみましょう。日帰りで離島に行くことになるとは思いませんでしたよ……。
安座間港へ
はい、見慣れた朝食ですね。昨日はマクドナルドでブログを書きあげた後、近くの快活クラブへ避難しました。うるま市で止まるはずでしたが沖縄市まで出てこれたおかげで室内で夜を越すことができましたね。そこそこ栄えたところじゃないと快活はないので。野宿はハブがこわい(^-^;
まあさすがに今日は快活があるようなところまでは行けないので野宿しないといけないでしょうけど:;(∩´﹏`∩);:
今日は久高島という離島に寄るのであまり距離が稼げないと思います。まずは船に乗るために安座間港へ急ぎます。キビキビ行動しましょう。
それではまたどこかで、快活クラブ!
2時間ほど漕いだところでマックスバリュ発見。早めの昼食とします。
スーパーでの食事は安上がりで良いですね。色んなものが買えるので栄養バランス整いますし。この食事で!? と思われるかもしれませんがこのカップ麺の中には温泉卵を4つぶち込んであるんですよ。生トマトも食べましたし(トマトに全幅の信頼を寄せている)。
旅中、最も効率のいい卵の摂り方は市販の温泉卵、これです。割れば食えますから。ゆで卵と違って剥く手間もありませんし。卵は調理コストがかかりすぎます:;(∩´﹏`∩);:
食事が済んだらすぐ出発。安座間港まであと10km。
信号待ちなどでこまめにエネルギー補給。沖縄に来てから行動食はこの沖縄黒糖です。美味い。
おっ、晴れて来たなと思ったところで
海に出ました!
安座間港到着!
神秘の久高島
さっそくチケットを購入しましょう。久高島まではフェリーと高速船という二つの移動手段がありますが、今日はフェリーは整備中で動いていないとのこと。高速船一択ですね。フェリーの方がちょっと安いのでそっちに乗ろうと思っていたのですが。
チケット購入したので日陰でネコと一緒に出航時間が近づくのを待ちます。今日は陽射しが強い。さっきまで曇っていたのに。゚(゚^ω^゚)゚。
まあ晴れてくれることに越したことはありませんけどね。
高速船の出港準備が整ったようです。乗り込むとしますか。
高速船、満席でしたが自転車持ち込みは私一人だけでした。久高島は自転車借りられるのでわざわざ持ち込むことも無いですからね。私の場合はまあ旅の相棒ですし、自転車乗っけても往復400円プラスというだけなのでレンタルより安く済むかなと思って連れてきました( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )
小さい船にこの自転車、めっちゃ目立ってしまう……。
船内に入って最善列に座ります。そういえばフェリーは結構乗りましたけど高速船というのは初めてかもしれませんね。一体どれだけ早いのか楽しみです( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
船が速すぎる pic.twitter.com/26A9yFRmzT
— ほこから@日本一周213日目 (@fawtMT) April 5, 2023
出航3分で酔いました。ジェットコースターに乗っているかのような縦揺れ。
久高島上陸!
というようなテンションではありません。
高速船に内臓をシェイクされすぎました。ぐおお、気持ちわる……。゚(゚^ω^゚)゚。
少し歩いて空気を吸うと徐々に回復。久高島も空気が美味い!
マジで沖縄情緒に溢れてますね久高島。サイクリングを始める前からワクワクしちゃいます。
久高島はそんなに大きくはない島で、2時間もあれば余裕をもって一周できてしまいます。適当に走っても迷う事はありませんから気になる道を進んでいきましょう。
とはいっても目的地はあるのでできるだけそちら方面に行くようにはしますが。目的地というのは久高島に来た大目的である聖地フボー御嶽です。
走っていると茂みの切れ目から海が見えますが、それが息を呑むほど美しいです。自転車の慣性に任せて通り過ぎてしまいましたけど、これは写真に残さないとでしょ! と引き返して撮りました。この先こんな景色ばかりだったのでわざわざここで撮る必要もなかったんですけどね。それだけ贅沢な景色に溢れた島です。
舗装路が終わってしまいました。仕方がない。歩きますか。
おそらくフボー御嶽に続いている道。黒い蝶々が多いですね。不吉なような神秘的なような。
脳内BGMはButter-Flyです。
やはりフボー御嶽は近い。
先客の自転車が停まっていますね。どうやらフボー御嶽に到着したようです。
絶対禁足『フボー御嶽』
そもそも『御嶽(ウタキ)』とは何か。
それは琉球開闢神話における創世神アマミキヨが作り出した聖地の事です。
琉球開闢神話! 青森のねぶたでそれを題材にしたものがありましたね!
イザナギ・イザナミとは異なる、琉球開闢神話と呼ばれる国生みの伝説。生み出された聖地『御嶽』はフボー御嶽以外にも存在します。しかしここほど禁足の縛りが厳しい御嶽は無いでしょう。
森に入った瞬間からもう立ち入り禁止の立て札。沖縄の重要な御嶽はもともと男子禁制であることが多いです。
女人禁制は見る機会が多いですが男子禁制というのは初めて見たかもしれません。女人禁制だとパッと思い浮かぶのは相撲の土俵だったり、「かつては」まで含めるなら出羽三山や飯豊山などもそうですね。
男子、もしくは女人近世の理由を簡単に説明するならば、これはその聖地における祭祀者、神官の役割を男と女どちらが担うかによって変わってきます。男が祭祀者なら女が、女が祭祀者なら男が禁制を受けることになります。
フボー御嶽が男子禁制なのは『ノロ』と呼ばれる巫女が祭祀を執り行う為。と言っても現在は島民の女性であっても立ち入ることができないというほぼ完全禁足地になっています。かつては観光客であっても女性であればこの先に入れたようなのですが、男子禁制を破る人や、無許可で私的な儀式を行う頭のおかしい人達のマナーやぶりによってこのように厳しい禁足が敷かれることとなりました。
現在はノロを筆頭とした神女たちが祭祀の際に立ち入るのみとなっています。つまり誰も入れないという事なんですよね。
なぜなら祭祀を執り行なう役割を与える就任儀礼の『イザイホー』は1978年を最後に祭礼が途絶えているからです。女性が中心となって祭祀を行ない、男性が政治的な役割をもつという沖縄の社会での伝統。日本古来の祭祀の原型を留めているのではないかと多くの研究者の注目を集めてきましたが、いまやその存続と継承が危ぶまれる状況になっています。
森に入ると本当にすぐさま簡単な紐で仕切られこの先への進入を防がれてしまいますね。
カメラでできるだけ奥を撮ってみますが御嶽は確認できません。簡単な石積の台があるとの話ですがとても見ることはできません。
ただ本当に紐が張ってあるだけで進むことはできませんが不可能ではないというのがなんだかいいですね。つまりこの土地が禁足地であり続けられるのは人の良心によるものなんですから。
ちょっと跨げば自分の好奇心を満たすことができるのに大人しくこの簡単なバリケードに阻まれておく。各々が、「この地を踏み荒らさないでおこう」と自制した結果、禁足が維持されているという事です。
それは見えない膜が張られているかのようで、物理的に侵入できないよりもよほど聖域さが強くなっているように感じられます。
まあその膜を破るアンポンタンのせいでここまで禁足が厳しくなってしまったのですがね(メ゚皿゚)
ノロたち神女しか入れない聖域。そのノロを任命するイザイホーすら途絶えかけている今、ほぼ完全な禁足地になりかけているフボー御嶽ですが、「目の前に道があるのに自分は一生この奥の景色を見ることはないんだろうな」と思うとかえってこの土地の神威を感じてしまいます。
聖域だから入れないのではなく、入れないからこそ聖域たる。神の下りた地ですから、人間が入れないことでより説得力が出るパターンですね。禁足ゆえに聖域。フボー御嶽、堪能させて頂きました。
ちなみにイザイホーはNPO法人科学映像館より公式に公開されていたりします。現在のフボー御嶽の現状を鑑みるとすごく貴重な映像資料です。
ハビャーン
久高島での大目的は達成しましたがせっかくですから久高島を一周します。島北端のハビャーンという岬へ行きますよ。語感が面白いなハビャーン。
ハビャーン到着!
ここは琉球開闢の祖アマミキヨが上陸した聖地とされています。
絶景絶景。
ウパーマ浜
他の浜にも出てみましょう。こちらはウパーマ浜。
ゴミ袋がこんなになるくらいゴミが落ちているのでしょうか、嘆かわしいねぇ(๑-﹏-๑)
巨大なガジュマルの樹
こちらは巨大なガジュマルの樹という場所。ご覧の通り巨大なガジュマルの樹です。このカジュマルの樹、巨大だなぁ。
シマーシ浜
三輪車が運転に手間取っていました。ここから出るのは大変そう。
久高島で一番好きな浜かもしれません。岩もとげとげしていなくて、緑の量もちょうどいい。
ただ泳ぐわけでもないのに浜にいても100%楽しめませんね。次に行きましょう。
久高小中学校
とても立派な校舎。小学校と中学校が一緒なんですね。離島の学校って見ていると穏やかな気持ちになります。ここに通っている子供たちはどんな生活をしているのか気になりますね。
久高島一周完了!
本当に2時間足らずで一周できてしまいました。日帰りでも楽しめる離島、久高島おススメです。
やはりレンタルサイクルを使っている方が多いですね。狭い島なので同じ人を何度も追い越したりすれ違ったりで軽い顔見知りになった感じが面白かったです。
役目を終えた自転車も沢山ありますね。
あと久高島、ネコが多い。
ネコと日本一周。
また一匹増えた。
もう一匹追加です!
何見てんだ……!
日本一周に興味があるのかい?ฅ^•ω•^ฅ
私の自転車の周りにヤンキーがたむろしています。
なんだその目は……!
目撃者。
動物撮るのは楽しいですね。
そろそろ港に戻りますか。
記念に一枚撮って来ましょう。三脚出すの面倒なのでカメラを地面に置いて撮影です。地面が盛り上がっているだと……!
出航時間。また再び揺れとの戦いです。でも酔いたくないので今度は外で立ったまま乗船します。空気さえ吸えれば酔いません。
荒波越えて安座間港へ帰還。酔いませんでしたが
めちゃくちゃ濡れた(。◔‸◔。)
私はスプラッシュマウンテンに乗っていた?
時刻は16時半。そろそろ寝床を見つけておかないといけない時間帯ですが今日はもう一か所御嶽へ行く予定です。それが斎場御嶽(せーふぁうたき)です。
琉球王国最高の聖地『斎場御嶽』
斎場御嶽は500mほど離れたところに駐車場があり、入場券もここで購入します。
500mも離れているのか……と思いそうになりますがここか斎場御嶽までキツイ斜度が続くので、積載車の身としては徒歩上等という気持ちです。登るのは歩きが楽。
現在17時前。18時閉園の斎場御嶽ですが結構ひと気があります。さすが世界遺産(シレっと)。
そう、斎場御嶽って世界遺産なんですよ。
斎場御嶽が認定された理由は、琉球地方における宗教儀礼や祝祭が、今でも活発に行われていることです。自然崇拝的な信仰思想に基づく「祈り」の文化は、市民の生活や精神の中に活用され、文化として生き続けています。古来より続くこの祈りの文化が現在でも継承されていることに価値を見出し、世界遺産に認定したとのことです。
入り口到着。受付に駐車場で買ったチケット渡して中に入ります。
まずはビデオ鑑賞。斎場御嶽について簡単にビデオ説明を受けたのちに実際に御嶽を回っていきます。
御嶽は琉球開闢神話にも表れる聖地という説明をフボー御嶽の時もしましたが、それら御嶽の中でも斎場御嶽は琉球王国最高の聖地です。
国王や、聞得大君(きこえおおきみ)と呼ばれる琉球王国における最高位の神女の聖地巡拝の行事を今に伝える東御廻り。その参拝地として現在も多くの人々から崇拝されています。
御嶽の中には6つの神域(イビ)があり、琉球国王はこの6か所を参拝しながら国家繫栄・五穀豊穣などを神に祈願しました。
御嶽内には久高島を望む遥拝所が設置されています。
琉球王国の絶対的な存在である国王はまさに太陽であり、その太陽のあがる方向にある久高島は東方楽土ニライカナイへの「お通し(遥拝)」所として沖縄各地で崇拝されています。
道が登山道めいてきましたね。
大庫理
まずは大庫理(うふぐーい)。首里城正殿の二階は大庫理と呼ばれ、祭祀的な機能を持つ格式の高い場所です。聞得大君のお新下り儀式(最高神職に就任する儀式)での「お名付け(霊威づけ)」儀礼はここで行われます。
次に行きましょうか。それにしても道の自然パワーが強すぎる。
ぱっと見ジャングルと言われても信じてしまいそうになりますね。
寄満
お次は寄満(ゆいんち)。寄満とは首里城内にある建物の名前で、国王のために食事を作る厨房を指します。
当時、ここには国内外からの海幸・山幸が集まりました。それが、「豊穣の寄り満つる所」と理解さたと考えられます。同じ名前を持つ斎場御嶽のこの場所には、第二次世界大戦前まで、その年の吉兆を占う馬の形をした石(うまぐわーいし)が置かれていました。
斎場御嶽のメインディッシュ、三角岩が見えました。
シキヨダユルアマガヌビーとアマダユルアシカヌビー
まずはここにある二つの杯。
シキヨダユルアマガヌビーとアマダユルアシカヌビーです。はい、もう覚えられませんね。何ですかと。ガヌビーで終わるかと思いきやもう一方はカヌビーなの止めてくれと思ってしまいます。
この二つの杯は二本の鍾乳石から垂れる「聖なる水」を受けるためのものです。それぞれが中城御殿(国王の世子)と聞得大君御殿の吉兆を占うとともに、お正月の若水とりの儀式にも使われる霊水でした。
三庫理とチョウノハナ
こちらが三角岩。自然岩や洞穴に囲まれたこの場所には、いくつもの拝所が集まっています。正面に見える三角形の空間の突き当たりが三庫理(さんぐーい)、右側がチョウノハナの拝所で、いずれも首里城内にある場所と同じ名前を持っています。また、左側からは太平洋と久高島が遠望できます。
三庫理はともかくチョウノハナはよく見えませんね。
チョウノハナは拝所の中でも最高視されるもので、海の向こう側には神の島である久高島が見えるように設計されているのです。
昔は奥に行けたようなのですが現在は策で囲われてしまっています残念。
御嶽巡りを振りかえって
これで世界遺産『斎場御嶽』巡りは終了です。ここは正直に言ってしまえば
えーなんか沖縄に斎場御嶽っていう世界遺産があるんだって~
ふーんなんか植物とかすごい感じ
でも地味かなぁ
くらいの感想になるおそれがあります。世界遺産とはいっても豪華絢爛な建築物があるわけでもありませんし、自然と言っても30分もあれば回り切れる規模のものしかありません。落ち着いた雰囲気が行き過ぎていっそ質素にすら思えるこの空間。目に楽しいものばかりではないでしょう。
しかし他の御嶽を見たうえでここが御嶽の最高位と認識した瞬間この場所は輝くんですよね。斎場御嶽、「斎場」自体に「最高位」という意味があるのでこの名はいわば通称。正式名称である「君ガ嶽、主ガ嶽ノイビ」からも伝わるここが一番だぞという説得力。
そんな琉球王朝において最も重要である斎場御嶽はいたるところで神の島たる久高島が見えるように設計されていました。その久高島にあるのが絶対禁足であるフボー御嶽というつながり。じゃあフボー御嶽が最高位の御嶽になりそうなものですけどそうではない不思議に想像が膨らんでしまいます。
聖地は拝するものでそこ自体を王朝としての最高位の霊地にしたくはない、のか? など。
とにもかくにもこの世界遺産の価値は信仰という物語をバックボーンとしたうえで観賞するものなのかなと感じました。
フボー御嶽も斎場御嶽ももとはどちらも男子禁制。いまは片や絶対禁足地。片や世界遺産として開かれた聖域。同じ御嶽ですが在り方は真逆になったこの二つの物語に思いを馳せることのできた一日でした。
ブログの流れ的に斎場御嶽いってからフボー御嶽いきたかった
フェリーの時間的に久高島を先に渡らないと行けなかったんですよね。
「斎場御嶽に来ました。久高島見えます。あそこにも御嶽あるんですよ。では行ってみましょう」の流れで書けたら楽だったのに。゚(゚^ω^゚)゚。
八重瀬まで出ます
再び自転車漕ぎ始めたのは17:20。さて今日はどこまで行きますか。ここらへんだともう那覇に出るまでネカフェ的なものはありませんからね。せめて野宿しやすい場所まで行きたいところ。
いかし日が傾いてきてもあまり焦りがありません。19時過ぎてもまだ視界が効きますからね。
空が赤くなるのはあっという間です。しかし沖縄の夕日、だいぶ気に入りました。毎回美しくてうっとりします。
八重瀬に日が沈んでゆく……。
私もここいらで行動終了しますかね。街からは離れているのでネカフェもマクドナルドもありません。古宇利島以来の電源無し野宿としゃれこみましょう。
とりあえずそこのスーパーで夜ご飯買って寝る場所探すか……と思い寄ったお店。半分道の駅みたいになっていて、食事しながら「え、ここでいいじゃん」となりました( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
ということでブログを少し進めておやすみなさい。残りは明日マックに行ってブログを書きあげないと。゚(゚^ω^゚)゚。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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