2023-10-8
「まさか自分がお遍路をすることになるなんて」
一番札所『霊山寺』を前にしたときにそんな気持ちが湧いてきました。この日本一周の旅を始める前から、もっと言えば旅をしてみようかなと思いいたる前から「いつかはやってみたいな」と思っていたのが四国遍路です。それを日本一周という旅の最期に行えるんですからこんなに恵まれたことはないでしょう。山と寺社をテーマに日本一周をしてきた締めとしてお遍路程ふさわしいものはありません。そんなお遍路のいよいよスタートを切る本日。新たな旅路に出るワクワクと、未知に対する少しの不安が入り混じる始まりの一日でした。
お遍路(四国八十八ヶ所参り)とは
讃岐国(香川県)で生まれた弘法大師空海はたびたび四国の地で修業を重ね、ある時は山中に、またある時は集落の、海浜の突端にその御跡を残されました。その足跡がやがて人々の慕う所となって寺院を新たに建立、或いは既存の寺院を修繕し八十八霊場の開創となりました。
お遍路とはそんな四国に点在する八十八ヶ所の霊場寺院を辿る巡礼。徳島県にある一番札所から香川県にある八十八番札所までを参拝する約1200kmの旅になります。
当初は弘法大師の足跡を追い、厳しい修行を積むことで「超自然的な力が得られる」と考えた行者たちが中心でしたが、江戸時代の半ばにもなると大師信仰の広がりとともに全国から多くの人々が「死者の供養」「病気平癒」などを願ってお遍路をするようになりました。
お遍路の周り方
お遍路には札所を番号順に巡拝する「順打ち」と逆回りする「逆打ち」があります。どちらが推奨されているということも無く周り方は基本的に自由です。一番札所『霊山寺』から始める必要もありません。もともとは最寄りの札所から回り始めるのが一般的で、現在もそれは同じです。
参拝できるところまで参拝して日常生活に戻り、また時間ができた時に続きから再開するのも問題ありません。私は日本一周中ですから時間制限というものはないも同然なので一度に八十八ヶ所すべてを回ります。こうした中断せずに遍路を行う事を「通し打ち」と呼びます。古くは参拝した寺院に自らの名を書いた木札を打ち付けたことから、現在でも参拝することを「打つ」と呼ぶのです。
遍路にかかる期間は通し打ちの場合、徒歩だと健脚の方で45日前後。自転車でのお遍路だとちょうど一月ほどかかるかもしれませんね。
すべての札所を参拝することを「結願」。その後、高野山に参拝することを「満願」と呼びます。高野山の奥の院では今も弘法大師が生きて修行を続けているとされているんですよ。私は満願まで行くつもりです(・`_´・)
願いを、満たせーー
お遍路スタートの日
目覚めろーー
北島中央公園とうとうやって来ましたお遍路編の初日です。起床時間は5時。蚊が多くて熟睡できませんでした。
お遍路の始まりは鳴門市にある一番札所『霊山寺』。鳴門市には第一次世界大戦中、ドイツの捕虜収容所がありましたが、地元の人たちは捕虜を温かく迎え様々な交流が生まれたといいます。シラーの詩によって人類愛を歌い上げた、ベートーベンの第九交響曲『歓喜の歌』が日本で初めて演奏されたのも鳴門だとのとこ。こうした地元の方の優しさが、お遍路さんをもてなす「お接待」の文化のルーツなのかもしれません。
一番札所の案内板が出てきました。テンションが上がってきます。このペースなら納経所が開く7時前に到着しますね。
ちなみに大麻比古神社というのは阿波国一之宮です、が!
お遍路初日の記事は一番札所の描写に集中したいので今回は一之宮はスルーします。八十八番札所を打った後はお礼参りに一番札所に戻ってくる予定なのでその時に大麻比古神社は参拝しようと思います。
【一番札所】笠和山『霊山寺』
さあさあさあ!!!
とうとうやって参りましたお遍路最初の札所!
一番札所『霊山寺』!
さすがに何か感じ入るものがありますね。これからお遍路が始まるんだという実感が強まってきました。
7時になると同時に納経所が開店(店?)。まだお遍路グッズで足りないものがあるのでここで購入してからお参りを始めます。私のようにこれからお遍路をスタートするんだろうというピカピカの一年生の姿だけでなく、明らかにもうお遍路何周かしていますといった熟練の方の姿も見かけました。
そこが最初の札所である霊山寺の特別なところですね。初めてお遍路に臨む方、何度目かのお遍路に臨む熟練者、または八十八ヶ所回ってお礼参りに戻って来た方。スタートする人もゴールする人も集まる、始まりと終わりが交わる霊場です。そうして輪になっているお遍路の道。その輪の結び目にいるというのは身の引き締まる思いがします。
追加で購入したのは輪袈裟、白衣、納札の三つです。
輪袈裟
首からかける略式の袈裟。保護ビニールに包まれているのですが袈裟を汚さないためにビニールを付けたまま使用することを勧められました。
白衣
「南無大師遍照金剛」と弘法大師のご宝号が書かれた白装束。かつての四国遍路はまさに命がけ。死に装束の代わりに身に付けたものと言われています。
納札
住所、氏名、巡拝年月日を記入する札。本堂と大師堂にある納札箱に収めます。また道中、お接待を受けた際にお礼として納札を渡す慣習もあります。
これらに加えて昨日、コンビニで受け取った納経帳と
経本を持ってお遍路をスタートします。
私のお遍路装備は本当に略式も略式です。本当ならさらに金剛杖も持ちたいところ。金剛杖には弘法大師の魂が宿るとされます。お遍路を特徴づける言葉の一つに「同行二人」がありますが、これはお遍路の間ずっとお大師さんと共にいるという考え方です。その依り代が金剛杖で、金剛杖があるがゆえに同行二人であるといっても過言ではありません。
また、現在はインフラも整い旅行として観光バスで回ることもできるお遍路ですが、本来は生きるか死ぬかの命がけの修行。金剛杖には卒塔婆と同じ意味合いも含まれています。元々死に装束の白衣で来ているんだから死んだら墓代わりに、といったことです。遍路の覚悟を視覚化するという意味でも是非持ち歩きたいものです。
ただその名の通り杖なんですよ。折り畳みができる訳でもない普通に長い木の棒で。自転車でお遍路をしようと思うとどう考えても持ち運びが難しいく、事故リスクを跳ね上げる効果しか得られません。折り畳み傘を引っかけているママチャリのように運ぶことも不可能ではないかもしれませんが、この杖は弘法大師の化身ですよ。それは罰当たりが過ぎるというもの。
修行は形を整えるのが重要なのではなく、結局は修行者の心の在り方が問題だろう、と自分に言い聞かせて今回は金剛杖は諦めました。金剛杖の携帯をあきらめるのは自転車とバイクで遍路する人くらいでしょうね。歩きと車での遍路であれば必須装備です。
まあどんなスタイルでお遍路するにしても最悪、手ぶらで霊山寺に来て納経所の人に見繕ってもらえば必要なものはすべて揃います。現地で購入したからと言って割高という事もありませんしね。私は納経帳なんかはAmazonで3000円ちょっとのものを購入しましたが、霊山寺には2000円代のものもありましたし。
お遍路用具が揃ったら納札に住所、氏名、巡拝年月日を記入しましょう。納札は各寺の本堂と大師堂にある納札箱に収めるので八十八ヶ所×2で176枚記入することになりますね。
176回も住所、氏名、巡拝年月日を!?
完全に小学校のペナルティとしての書き取りじゃないですか。゚(゚^ω^゚)゚。
お接待を受けた際にお礼として納札を渡すかもしれないことを考えるとさらに追加で何枚か書いておかないといけないでしょうね。ヤバい。
ここで全部書いていると日が暮れてしまうのでとりあえず今日必要になる分だけを記入してお遍路をスタートさせます。どこかで腰を据えて納札は書かないといけません。
では、購入したばかりの真新しい白衣に袖を通し、輪袈裟を掛けたらお遍路の始まりです。これより修行の身。弘法大師の足跡をたどる旅の始まりです。
最初にくぐるのは「発心」の門。四国四県はお遍路においてはそれぞれ四つの道場に見立てられており、ここ徳島県は「発心の道場」とされています。発心とはすなわち「思い立つ」ということ。
お遍路に必要なものは4つあると言われています。「時間」「お金」「健康」の3つはすぐに思い浮かぶでしょう。最後の一つがこれまた頓智が効いているといいますか、それは「お大師さんに呼ばれること」だというのです。お大師さん、つまり弘法大師に呼ばれることというのは「お遍路をしよう!」と思い立つこと。そう思う事が発心の表れである、と。お遍路を始めようと発心し、実際にようやくそのための一歩を踏み出しました( •̀ᴗ•́ )
山門
四国霊場第一番、その山門(仁王門)に近づき立ち止まります。まずは一礼。
ここを通る人はどんな気持ちなんでしょうね。考えてみれば発心というのは容易なことではないかもしれません。「やりたい」は誰にでも、いくらでもあるでしょうが「やる!」と思い立つと、もうそれはいつか叶ったらいいなという願望ではなく、必ず未来にやらなくてはならない予定です。
仕事や学校があればお遍路のための数カ月の時間を空けることはとても困難でしょうし、定年後ともなれば今度は体力や気力がとネックになることは様々。「時間」「お金」「健康」三拍子揃ったとしてもそれをお遍路にあてようと思うに至るにはそれこそお大師さんとの縁が無ければ難しいのやも……。
ですからこうして四国霊場第一番に立てたことはその時点で幸福なことかもしれませんね。
山門をくぐり、まず向かうは手水舎。
手水で手を清めるのは一之宮参りで慣れたものです。毎度「手水舎チェック!」なんて言ってみてね。コロナ禍もあって柄杓での手水が少なくなった神社ですが、霊山寺は古き良き柄杓タイプ。良し良し。
本堂
本尊:釈迦如来
真言:のうまく さんまんだ ぼだなん ばく
お次は本堂を参拝。
最初にろうそくに火を灯し、次に線香に火を灯して香炉に立てます。この時、他の方が献灯したローソクで自分のローソクに火を灯してはいけません。他人の火をもらうもらい火という行為は、その人の業(ごう)全てを引き受けるという意味を持ちます。
献灯、献香を終えたら納札を納札箱に納めて(納が多い)読経をします。
読経をするために堂内に入るとこの光景です。灯籠の明かりがなんとも幻想的じゃないですか。
浮世離れした美しい堂内には私と同じように真新しい白衣に身を包んだ人々が礼拝しています。
見惚れて時間を忘れそうになりますがずっとここにいる訳にも行きません。経本を取り出して初めての読経といきましょう。経本には般若心経、13の仏様それぞれの真言などが書かれています。霊山寺の本尊は釈迦如来なので読む真言は「のうまく さんまんだ ぼだなん ばく」です。これを三回唱えます。
お経のどれもが普段は発音しないような音の並びで、経本に乗っているひらがなを読むだけの事なのにそれがとても難しく感じます。その中でも般若心経がとても難しい……!もう噛み噛みで読み終わるまでにとても時間がかかりました。
般若心経、名前だけはけっこう聞いたことがありましたがまさか中身はこんなに難しいお経だったとは。
気が狂う
狂うてまうわ、気が。
般若心経は大師堂でも唱えます。つまりこれを176ヶ所で唱えるんですよね。自信がなくなります。゚(゚^ω^゚)゚。
しかし、やるのみよ。ただ、やっていきます。読み続ければいずれ慣れてくるでしょう。
大師堂
読経を終え本堂を出たら鯉が沢山泳ぐ泉水池へ。そのそばに大師堂はあります。
大師堂での参拝手順も本堂と同じです。献灯、献香、納札そして読経。般若心経で時間を取られますね……。
さあこれで全部ですか。なかなか時間がかかってしまいました。お経がスラスラ読めないという事もありますが、それ以外にもローソク取り出すのに手間取ったりと色んなことがおぼつきません。まは一番札所ですから最初から完璧になんて無理な事ではありますが。これも徐々に慣れていくしかありませんね。
山門を出て一礼。兎にも角にもこれで参拝終了。最期に白衣などを購入した納経所に戻り納経所でお納経(ご朱印)をいただきます。
神社で御朱印を頂くのと同じですが、お遍路では納経と別に各寺院のご本尊が描かれた御影(おみえ)も頂けます。薄い栞のような紙ですね。これも大事に保管しておきましょう。
一番札所を打って完全にお遍路さんとなりました。さっそく次の札所に参りましょう( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
NEXT☞ 二番札所『極楽寺』
次の札所までの距離:約1.4km
移動時間(徒歩):約25分
【二番札所】日照山『極楽寺』
一番札所から二番札所はすぐ近く。西に向かって移動しているとあっという間に到着です。
山門
朱色の立派な山門が見えてきました。ここが二番札所日照山『極楽寺』です。本尊の阿弥陀如来は、修法中に阿弥陀如来を感得した弘法大師が自らその姿を刻んだものと言われています。
笑ってしまったのが日照山という山号の由来。この時刻んだ阿弥陀如来の像が放つ光がまぶしすぎて沖で漁をしている人たちの妨げになったので、本尊の手前に小山を築いたという伝説が日照山の由来です。デッケェ~エピソードだ。
山門をくぐって左手には願掛け地蔵。お地蔵さんの真言を唱え、自分も精進努力すれば不思議なご利益があるとされています。
休憩用のベンチがデカすぎますね。チャリダー基準で言えばこれはベンチではなくベッドです。お遍路文化が盛んな四国は旅人目線でベンチなど作られているのかもしれませんね。
境内は非常に手入れがされていて綺麗です。極楽寺には、ここで行き倒れてしまったお遍路さんのために立てられた無縁遍路供養観音があります。まだ二番の札所ですがここまででも多くのお遍路さんが歴史上亡くなっています。
遍路装束の白衣は死に装束という事が実感できます。今は道も整えられて車でも行けるお遍路ですが、そんな回り方ができるのも近代になってからの事。本来のお遍路は命がけであることを忘れず注意深く努めていかなくては行きませんね。
手水舎で手を洗ったら本堂へ向かいます。
長命杉
境内でひときわ目立つのがこの長命杉。奥の階段を登った先が本堂ですが、まずはこの杉を観察していきます。
凄まじい存在感の長命杉。この杉は弘法大師自らが植えたと伝えられており、杉に結ばれた紅白の紐に触れれば霊気を受け取り諸願成就するといいます。
握っておきました。力が湧いてくるわい……!
本堂
本尊:阿弥陀如来
真言:おん あみりた ていせい から うん
石段を上がって本堂へ。
ろうそくを点けて線香立てて、と。
この線香を取り出すのに時間がかかりますね。ちゃんとした線香とローソク入れを買い足さないと不便かもしれません。
そして読経です。
よ、読みにくい。普段、使っていない部分の脳みそが刺激されます。本当になれるのでしょうかこの読経は。゚(゚^ω^゚)゚。
大師堂
本堂での礼拝が終わったらお次は大師堂です。
本堂と大師堂の間には安産大師の像が。寺の縁起によれば、弘法大師が極楽寺に逗留した際、難産に悩む女性が大師のお加持によって無事に安産しました。明治の頃にも難産に悩む女性がこの安産縁起と同様の霊験を得て無事に男子を出産。感動した女性は安産大師像を奉納しました。それが現在も安置されているこの像です。
霊験あらたかなり弘法大師。
納経所
最後に納経所で納経していただき参拝終了です。ここも霊山寺ほどではありませんがお遍路グッズが揃っていますね。お遍路に必要なものは四国全域で揃うのかもしれません。
☞NEXT 三番札所『金泉寺』
次の札所までの距離:約2.6km
移動時間(徒歩):約40分
【三番札所】亀光山『金泉寺』
お遍路さんの為か札所への案内板があちこちに立っています。こういう木製の標識もそうですし、
青看板と一緒に「〇番札所」というように分かりやすく表示してあります。スマホの地図に頼らなくても周って行けそうですね。
歩き遍路さんは車や自転車では通れないような道を進んでいきます。すごい。
山門
極楽寺から20分ちょっと漕いで三番札所に到着。お遍路序盤はチュートリアル用に短い間隔に札所があって助かります。しばらくはサクサク回れそうです。
実際にお遍路をやる前は、SNSなどで一日に何カ所も札所を回るお遍路さんを見て「もったいないなぁ。八十八ヶ所しかないんだから一日一寺じっくり回って堪能すればいいのに」なんて思っていましたがそんな贅沢な時間の使い方は誰もができることではないですね。自分が進みやすいペースで動いていたら自然と一日の内に複数の札所を回れてしまうようになっています。
こちらも朱塗りの山門が綺麗な札所。寺伝によれば聖武天皇の時代に行基が堂宇を建立し「金光明寺」と称したと言われています。その後、弘法大師がこの地に訪れた時に、日照りに苦しむ民のために井戸を掘った所、霊水が湧出。長寿をもたらす黄金の井戸とされ寺名も「金泉寺」と改められました。
私がここに到着したタイミングで観光バスがやって来て大人数のお遍路さんが下りてきました。本堂が混む前にお参りを済ませますか。
まずは手水舎で手を洗います。やはり札所の手水舎はどこも柄杓スタイルなのかもしれません。良き。
そこまで広くはない境内ですね。左が本堂、右が大師堂です。
黄金地蔵尊の祠もなかなか存在感があります。弘法大師と霊水の伝説は四国中に存在しますが、この金泉寺では実際に黄金地蔵と共に井戸が祀られています。
井戸の水に顔が写れば長寿という言い伝えが残されていますが暗くて見えにくそうですし、もし見えなかったり、井戸が枯れていたりしたらガッカリするので覗き込むのはやめておきます。
井戸をのぞき込んでなんたらかんたらというのは新潟でも体験しましたね。その時は井戸が枯れていて「なんやねん!」と思ったことを覚えています。確か酒呑童子に関する何かだったような……?
本堂
本尊:釈迦如来
真言:のうまく さんまんだ ぼだなん ばく
ローソク、線香の取り出しに手間取り、般若心経でも詰まる。一連の礼拝手順をこなすのにもまだまだ時間がかかります。
大師堂
同じ手順で大師堂もお参り。
私が大師堂で読経していると、本堂の方でほら貝を吹いているお遍路さんがいて驚きました。お遍路装束も略式でない完全なものですし、その上にほら貝!? 上には上がいる事をビジュアルでも分からされました(。◔‸◔。)
納経所
お参りが終わったら納経してもらいに行きましょう。
納経所に向かう途中で見つけた弁慶の力石。1185年の冬に源平合戦で平家打倒の命を受けた源義経が讃岐国屋島に向かう途中、この寺に立ち寄って戦勝祈願したという言い伝えがあります。この石は兵の士気を挙げるために力自慢の弁慶が持ち上げさせたというものなんですって。
義経は香川県の大阪峠を越えて屋島へ向かったとされますが、その道は古くからの遍路道の一つでもあります。今でも結願したお遍路さんはこのルートを通って金泉寺を経由し一番札所へお礼参りに行く人もいるようです。
今の私にとってはまだまだ先の話ですね。順打ちのお遍路さんにとって香川県は最後に到達する県ですから。
現在10時半。自転車という事もあり中々早いペースで札所を回れている気がしますね。
☞NEXT 四番札所『大日寺』
次の札所までの距離:約5km
移動時間(徒歩):約1時間15分
【四番札所】黒巌山『大日寺』
三番札所までテンポよく巡拝してきましたが四番札所は楽々快適サイクリングとはいきませんね。四番札所『大日寺』は山寺なので否応なしにヒルクライムをさせられます。゚(゚^ω^゚)゚。
山門
おニューの白衣に汗がにじむ頃、四番札所の山門が見えて参りました。
という事で四番札所『大日寺』に到着。駐車場がめちゃくちゃ広い。
大日寺の名前の由来はそのまま大日如来。この地に逗留した弘法大師が大日如来を感得し、自ら一刀三礼して彫ったと言われる秘仏が本尊です。
山門は鐘楼を兼ねた珍しいつくり。
一階が角柱。
階上が円柱というのも珍しいつくりですね。
境内もまた広め。
参拝客も多いです。
山門を通ると最初に手水舎。手水舎の砂岩をくりぬいて造られた手水鉢はかつては湧水を引き込んでいたが白濁していたことから「蛤水」と呼ばれていたようです。
本堂
本尊:大日如来
真言:おん あびらうんけん ばざらだとばん
本堂で参拝。大日寺は何度か廃寺、再興を繰り返しましたが阿波藩主、蜂須賀家の庇護のもと江戸前期に現在の堂宇が整えられました。
大師堂
本堂と大師堂はガラス張りの回廊で繋がっており、ガラスの向こうには西国三十三観音霊場の本尊が安置されています。
各霊場の本尊の写し仏を祀り、持ち帰った八十八ヶ所霊場のお砂。それを踏みながら礼拝することで四国八十八ヶ所を巡ったのと同じ功徳があるとされる「お砂ふみ」を設けている札所はいくつもありますが、西国三十三ヶ所の観音様をすべてお参りできるというのは初めて聞きました。
端正な木造の観音様は江戸時代半ばに大阪の信者から奉納されたものだそうです。
西国三十三観音のお姿を見させてもらった後は大師堂でお参りです。ちょうどそのタイミングで観光バスでやってきた団体さんと読経のタイミングが同じになったんですけど、皆さんすごいですね。ほとんどの方が般若心経を含めて諳でお経を唱えているんですよ。暗記してるの!?
完全に、初めてのお遍ラーではないですね。御見それいたしました。私も経本を見ずに般若心経唱えて周りをビビらせたい(不純)。
納経所
納経してもらったら参拝完了です。お遍路を始めたばかりなので、「線香灯して納札して読経してようやく納経帳書いてもらえるのか~」と疲れ切っていますが、本来、納経というのは般若心経や観音経などを写経して奉納し、参拝したことの証明として寺が発行したもの。
それで言えば現在は唱えるだけでも納経してもらえるのですからありがたいですよね。もっと言えば別に監視が付いているわけではないのでお参りをせずとも納経帳を埋めることはできるのですが、そういうズルをするのであればハナから自分の足でお遍路をする必要すらありません。
自己修行の厳しいところは楽をすることも可能であるという事。楽な方に流れないように自分を監視する目を自分で用意する必要があります。もしかしたらその役目がお遍路においては弘法大師なのかもしれないなと思ったり。同行二人、最後までお付き合いいただきましょう大師様。
☞NEXT 五番札所『地蔵寺』
次の札所までの距離:約2km
移動時間(徒歩):約30分
【五番札所】無尽山『地蔵寺』
四番札所が丘の上にあったので次の五番札所まではほとんど下りで楽ちんアクセスでした。四番札所で一緒になった観光バスとほぼ同着でしたね。
山門
五番札所『地蔵寺』は嵯峨天皇の勅願によって弘法大師が開創。その後、熊野権現の導師だった浄函上人が熊野権現の神託によって霊木に延命地蔵菩薩像を刻み、その胎内に大師作の勝軍地蔵菩薩を納めたとされます。
そうした小さい仏像は山伏などが笈に入れて旅をしたといいます。笈は禰󠄀豆子がはいっている箱っぽいやつ。蟲師のギンコが背負っているやつとか。
地蔵寺には有名な五百羅漢があることから地元では羅漢さんの愛称で親しまれたといいます。五百羅漢ですか。岩手で見ましたね。
山門をくぐったらまずは手水舎。今日、手を清めまくりですね。
本堂
本尊:勝軍地蔵菩薩
真言:おん かかかび さんまえい そわか
寺名の通り本尊は勝軍地蔵菩薩。このお地蔵様は、右手に錫杖、左手に宝珠、甲冑をまとって軍馬にまたがる勇ましい姿をしています。
勝軍地蔵菩薩に祈れば戦いに勝つとされたことから、源頼朝や義経、蜂須賀家などの武将たちが多くの寄進をし、最盛期には阿波、讃岐、伊予三国に末寺300、塔頭26を数える大寺院でした。
しかし天正の兵火(1578~1580)に長宗我部勢に攻められ焼失し、江戸期になって本堂、大師堂などが再建。羅漢堂もその時に立てられました。
大師堂
本堂と大師堂の間には超デカいイチョウの木がそびえ立っています。この木の樹齢は800年以上。神々しさを感じますね。
大師堂参拝前に、参拝客の方に「日本一周しているんですか?」と話しかけてもらって少し世話話。お遍路さんはよく見かける四国の方でも、日本一周している人は少し珍しいようです。日本一周勢がお遍路をするのはあまり珍しく感じませんけどね( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
納経所
お参りが終わったら納経タイム。
少しぱらついてきました。お遍路初日から雨とは試してくれますね(๑-﹏-๑)
☞NEXT 六番札所『安楽寺』
次の札所までの距離:約5.3km
移動時間(徒歩):約1時間30分
雨にて本日のお遍路は終了
五番札所を出た時点で12時を少し過ぎたくらいの時間。あと二か所くらいは打てるかなと考えていましたが雨が降り出したので今日はここまでにしておきます。
今日一日で五つ札所を巡ったことで足りないものも色々発見できましたからね。線香・ローソク入れを入手するのは今日最優先のミッションです。ちょうど雨宿りに入ったザ・ビッグの隣にダイソーがあるのでそこで必要なものを揃えていきます。
雨が落ち着いてきたら公園に移動して早めに休みます。お遍路初日はなんだかんだと疲れましたね。初めての事というのは何でもそうですけど普段以上に精神力を使うものです。旅慣れはしているつもりですけど、これからは徐々に遍路慣れしていかないといけないなぁ、と思った初日でした( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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