【富嶽三十六景旅⑤】千葉の工業地帯を走る(川崎→木更津)

舞台は神奈川から千葉へ。ETC未登載車はアホほど高い通行料のアクアラインを通って移動します。その後は富津岬から千葉駅までのサイクリングコースを取材しながら富嶽三十六景めぐり。そうして書いた記事を今回も自転車系ウェブメディア「Global Ride」さんへ寄稿しております。ぜひご覧ください。

Global Ride
葛飾北斎のまなざしを追って ——富嶽三十六景をめぐる自転車旅 #2 - Global Ride 日本を代表する浮世絵師、葛飾北斎の「富嶽三十六景」(実際は四十六点)の景色をめぐって行く自転車旅の第二弾。前回は富士山のお膝元である静岡県富士市を回るサイクリン...

そして今回取り上げる富嶽三十六景のひとつは、知らぬ者はいない北斎の代表作「神奈川沖浪裏」です。第五回目にしてもう浮世絵のトップオブトップが出てきました。

目次

アクアライン高すぎませんかね

2025-7-30

昨晩、川崎で友人と飲んで本日は千葉に向けて出発。東京エリアは葛飾北斎のホームですから大量に富嶽三十六景スポットがあるのですがそれは後半まとめて取材することにして先に遠方のスポットを取材していきます。

ということで川崎市と木更津市を結ぶアクアラインを通って一気に千葉へと参ります。アクアラインは有料道路ですが東京湾沿いに千葉県に行くよりははるかに近くガソリン代も抑えられるので迷わず通ります。Googleマップによると通行料も1000円しないみたいですし安いものです。

イオンモール木更津

そう思って通過したら4000円近く取られたのですが!?

ほこから

高価すぎるだろ!!!

どうやら格安の通行料はETCのみだったようです。まあ一般レーンの方が手数料かかるのはよく分かりますがそれにしても値段の差がデカすぎませんかね涙。もはや手数料というよりは「ETCを搭載していないことに対する罰金」の様相を呈していると思うのですが……。

まあ今日日、車ならETCなんて付いていて当たり前かもしれませんが、バイク乗りには厳しいかもしれませんね。

死角から襲い掛かってきた出費にゲンナリしながら快活クラブに避難。今日はここでデスクワークして終了にしましょう。アクアラインはいつかETC車で訪れてリベンジしたいです。

富津公園

2025-7-31

富津公園 第1駐車場

快活クラブで朝シャワー。その後は車で富津公園へと移動してハッチオープン。自転車セクションの始まりです。

本日も自転車系ウェブメディア「Global Ride」さんへ寄稿する記事のための取材です。千葉県では富嶽三十六景スポット3か所を巡るサイクリングコースを紹介する記事を書こうと思います。

富津公園 第1駐車場から西に進んでいくと富津岬にたどり着きます。そこが今回のサイクリングコースのスタート地点かつ富嶽三十六景スポットのひとつになります。いや、二つかな?

自転車であれば5分ほどで富津岬に到着。富津公園第3駐車場もここにあるので車で岬に来る方はここにアクセスするのが一番効率がいいでしょう。

「上総ノ海路」富津岬

東京富士美術館:https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/06261/

最初に紹介する富嶽三十六景は「上総ノ海路」。上総とは現在の千葉県中部のこと。江戸湾に面した湊としては木更津や富津が知られ、かつては江戸へ物資を運ぶための集積地として賑わった場所です。

現実の景色はこのような感じ。真ん中にぽつんと浮かぶ小島のようなものは、明治から大正にかけて首都防衛のために築かれた人工島・第一海堡です。この海堡の向こうに本来なら富士山が見えるはずなのですが、残念ながら富士側は曇り空。晴れていても、そうそう姿を見せてくれるものではありません。

富士こそ見えずとも、この海景にはまた別の趣があります。東京湾のほぼ中央に位置し、かつて首都防衛の要としての役割を担った富津岬。その歴史的背景を思えば、海堡を望むこの眺めは格別の味わいがあります。

そもそも千葉県側まで来てしまうと、晴れていても距離の関係で富士山ははるか彼方。「上総ノ海路」においても、富士は主題ではなく、あくまで風景の一部として小さく描かれています。それでも北斎の構図の妙は見事なもので、大きく帆を張った木更津船の帆と帆綱、そしてゆるやかに弧を描く水平線がつくる三角形の中に、富士の姿が小さく収まり、自然と視線を引き寄せる。目立たずとも確かな存在感を放つ富士山が、そこには確かに息づいています。

明治百年記念展望塔

明治百年記念展望塔に登るとさらに気持ちの良い景色が拝めます。

富士見のスポットとしてそもそも有名な様子
岬の先から見えるは三浦半島か

穏やかな景色にリラックス。岬の高台なだけあって風はめっちゃ強いですが。私は帽子を吹っ飛ばされました。

下りてサイクリングスタート、と行きたいところですがもう一つ富嶽三十六景の取材がここで可能なので撮っていきます。

「神奈川沖浪裏」

次は北斎の代表作として、そして日本絵画の象徴として世界に知られる「神奈川沖浪裏」。その名のとおり、舞台は現在の横浜市神奈川区沖、すなわち東京湾の神奈川湊付近です。

東京富士美術館:https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/03628/

「浪裏」という題のとおり、波の裏側をのぞき込むような大胆な構図が印象的です。描かれている船は、江戸市中へ鮮魚を運ぶための快速小型船・押送船。船員たちは荒れ狂う自然の力の前にひれ伏すばかりで、静止する富士山との対比がいっそう際立ちます。

同じ構図で写真を撮ろうと思うと東京湾上、もしくは千葉県側から撮る必要のある本図。そういうわけではるばる千葉までやってきたのですが、その情景を実際に写真で再現できるかといえば話は別。神奈川沖を望むこの場所では、風こそ強いものの波はいたって穏やかです。もし絵のような巨大な波が現れるなら、避難勧告が出ているに違いありません。

できるだけ再現しようと今回は小波にフォーカス。シャッタースピード1/5000秒で撮影し、かぎづめのように立ち上がる波の瞬間をとらえました。驚くべきは北斎の観察眼です。わずか一瞬しか現れない波の形を、一眼レフもない時代に肉眼で捉え描き出したのですから。

千葉の工業地帯を行く

富津公園を発ちサイクリング開始。車の通らない、自転車の走りやすいところを通っていたらトトロに会えそうな小道を案内してくるGoogleマップ。蜘蛛の巣がたくさん張ってあったのですが怒。

国道16号線に入ると交通量こそ多いものの、歩道も路肩も驚くほど広く、自転車でも余裕をもって走れます。さすがは浦安市から富津市まで続く京葉工業地域の中心部。物流の大動脈らしく、道路のスケールも堂々たるものです。

富士市で行った駿河湾沿いを走るサイクリングコースのように、海ぎわを間近に感じながら走れる場所ばかりではありません。そのため、海や緑地といった自然を100%体感するのは難しいものの、代わりに巨大な橋や海上輸送に使われるガット船(砂や砂利、石材などの工事資材を運ぶ作業船)といった人工物が目を引きます。千葉県が持つ「産業の街」としての一面を実感できるコースです。起伏も少なく、のびのびと走れる点もありがたいところです。

「旨い処 房味」で昼食

木更津市に入り、時刻は11時。少し早めですが、ここで昼食にすることにしました。サイクリングコースの紹介に欠かせないのがご当地グルメ情報。木更津といえば浜焼きが有名です。浜焼きとは、獲れたての魚介をその場で焼いて味わう豪快な漁師料理で、貝類やエビ、ホタテなどを炭火で焼き上げるスタイルが定番です。

ただこの日は、浜焼き店の多くがまだ開店前か休業中で、営業しているのはチェーン店ばかり。そもそもがっつりお昼ごはんというタイミングで浜焼きというのも、腹にたまるイメージがわかなかったので敬遠しました。米を食べたいね米を。

ということで、せっかくなら地元らしい定食屋がいいと思い立ち寄ったのが「旨い処 房味」。下調べをしていたわけではありませんが、駐車場はすでに満杯で店内も大賑わい。地元で愛される人気店であることが一目でわかりました。

旨そうな飯のにおいに近所の猫ちゃんも寄ってきたのでしょうか。

せっかくの港町での食事ですから魚介系が食べたいですね。この1100円のフライ定食を頂きましょうか。

運ばれてきたのがこちら。なんともボリューミー。チャリダーの食欲を十分満たしてくれそうです。

そして肝心のお味は……

ほこから

駐車場が満車なのがよく分かる

絶品。いや、美味いなこれ。日本一周をして全国の美味いものを食べてきましたがこれは、もしかしたら5本の指に入るかもしれません。何の気なしに訪れた定食屋で……? 自分でも驚きです。また木更津に来ることがあれば寄ろうと思います。

千葉のカルフォルニア「千葉フォルニア」

湾岸沿いを走るため、いったん国道16号を離れて県道87号へ。海を横目に北上を続けると、干潟が広がっていました。ここは牛込海岸潮干狩場のあたり。今日は海がいろんな景色を見せてくれて楽しいですね。

そのまま海浜公園通りに入ると、まっすぐに伸びた道の両側にヤシ並木が並びます。袖ケ浦市街から袖ケ浦海浜公園へ向かうこの通りには、約1kmにわたってヤシの木が立ち並び、まるでアメリカ西海岸のような景観。地元では「千葉フォルニア」と呼ばれ親しまれています。フェニックス(木の名前です)の並木が続く宮崎の道を思わせ、宮崎県民の私には親近感の湧く風景です。

ただ、ヤシの木に張られた「立入禁止」や「撮影時は周囲に注意」といった注意書きの幕が少々ノイズに感じますが、こういったものが貼られるくらい多くのトラブルがあったのだろうなということは察せられます。

どうやらインスタ映えスポットとして有名になり、中央分離帯への侵入や路上での撮影といった危険行為が相次いだようですね。このため「路上撮影禁止」と記された垂れ幕が設置され、注意喚起が行われるようになったとのこと。

注意喚起の効果があったのか、それとも今が平日の昼間だからなのか、賑わいとは程遠い落ち着いた雰囲気を感じる道です。

「袖ケ浦海浜公園」

千葉フォルニアを抜け、やがて見えてくるのが、大きな展望塔が目印の「袖ケ浦海浜公園」。

富士山と神奈川沖の位置関係から考えて、ここなら「神奈川沖浪裏」に近い構図の写真が撮れるのではと思い、今回の撮影地に選びました。眺望は申し分なく、東京湾越しの景色は壮観です。

ただし、手すりがあり波際まで寄ることはできませんでした。近くに寄れないかもしれないことは事前に航空写真で分かってはいたので「神奈川沖浪裏」の撮影は富津岬で済ませておいたのです。

しかし富嶽三十六景の舞台探訪を抜きにしても、海と空の広がりが心地よい素晴らしい公園。東京湾沿いを走るなら、ぜひ立ち寄ってほしいおすすめのスポットです。

袖ケ浦海浜公園を出たらしばらくは街中を走ります。途中でベルク千葉浜野店に寄り道。Amazon ロッカーで注文していたACアダプターを受け取ります。遠征中は通販したものの受け取りが面倒ですね。できるだけありがたいことですが。

「登戸浦」千葉ポートタワー&登戸神社

荷物を受け取ったらまた街中サイクリング。街路樹を抜けて向かったのは

千葉県のシンボル「千葉ポートタワー」です。

東京富士美術館:https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/06254/

対応する富嶽三十六景は「登戸浦」。登戸は現在の千葉県千葉市中央区登戸にあたります。いまでは埋め立てが進んだこの地区ですが、かつては絵に描かれているように海岸線がすぐそばまで迫っていました。作中では、先ほど見た牛込海岸潮干狩場のように潮干狩りを楽しむ人々の姿が見られます。注目すべきは大小二つの相似形をなす鳥居。その奥に富士山がのぞく構図は、「上総ノ海路」と通じる北斎らしい巧みな設計です。

ポートタワーの裏手に広がるポートパーク・ビーチプラザでは、いまも砂浜を歩いたり貝拾いを楽しんだりすることができます。

次に、千葉ポートタワーから自転車でおよそ10分、登渡神社へ向かいました。北斎の「登戸浦」で潮干狩りをする人々の背景に描かれた大小二つの鳥居は、この登渡神社のものではないかという説があります。

久々の手水舎

そこで鳥居から静岡方面に向けてシャッターを切ってみましたが、絵のような海中鳥居の面影はありません。別説では、ここから北西に約4キロ離れた稲毛浅間神社の鳥居がモデルだったともいわれています。

輪行で千葉駅から君津駅へ

サイクリングコースとしては千葉駅でゴール。ここから輪行で君津駅まで戻り、そこからは自転車で富津公園のマイカーまでたどり着きます。かなり大きめのサイズの輪行袋を持ってきましたがキャリアが干渉して思うように入らず苦戦中。千葉駅の前は人通りが多いのであまり手間取りたくないと焦って作業する手からも繊細さが失われ余計に時間がかかる……

かと思いきや通行人は全然私の方を見はしません。というかより大きな騒ぎが起こってそちらの方に注目している様子。

何かと思えば背後の歩道橋で飛び降り騒動が起きているじゃないですか。警察や消防関係者が歩道橋に身を乗り出した人を囲んでひと悶着しています。周りはそれを眺めたり、撮影したりしている野次馬だらけ。そりゃ自転車ばらしている私なんて物珍しくもなんともないですね。他のひとが気を取られているうちに作業を済ませましょう。

なんとか輪行袋に自転車を包み込んで電車に乗れました。

そうして君津駅へ。いや輪行は毎度手間がかかりますね。キャリアを付けたランドナーだからでしょうけど。

気合を入れなおしてあと1時間ほどライド。日が暮れる前には車に着けるでしょう。

夕日の景色がなかなか美しいのですがサイクリングコースの紹介としての取材は終わっているので寄稿する記事には載っけにくいのが残念です。

この写真だけは何とかねじ込みましょうか。

無事に車に到着。お疲れ様でした。

ピットイン。ちなみにこのベニヤのスロープは、

背面ドアの一部です。スロープにするためにこいつだけ独立させています。

閉めるとこんな感じ。今のところ問題ありません。もっと改善できそうではありますがそれは遠征終わった後にしましょう。

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この日の記録は自転車系ウェブメディア「Global Ride」さんに寄稿しています。そちらもぜひご覧ください!

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葛飾北斎のまなざしを追って ——富嶽三十六景をめぐる自転車旅 #2 - Global Ride 日本を代表する浮世絵師、葛飾北斎の「富嶽三十六景」(実際は四十六点)の景色をめぐって行く自転車旅の第二弾。前回は富士山のお膝元である静岡県富士市を回るサイクリン...
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