【富嶽三十六景旅③】富士の麓を楽しむサイクリング(富士市)

今回もいつも通り富嶽三十六景のスポットを巡っていくのですが、これまでと違うのは外部メディアへの寄稿取材として回っているという点です。寄稿先は自転車系ウェブメディア「Global Ride」さん。自転車を使い、サイクリングコースとして各スポットを紹介する形で記事を構成していきます。

報酬をいただいて書く記事となると、個人的な満足で済むブログとは違い、どうしても撮れ高が求められます。ところが、肝心の富士山は相変わらず恥ずかしがり屋で、雲の向こうから顔を見せてくれません。マジあの山ふざけやがって……

自然相手の取材は、思うようにいかないものです。実際にどんな記事になったかは、以下のリンクからご覧ください。今回のような「いつものひのもと行脚」と、「よそ行きの寄稿文」とを見比べてみると、その違いを楽しんでいただけるかもしれません。

Global Ride
葛飾北斎のまなざしを追って ——富嶽三十六景をめぐる自転車旅 #1 - Global Ride 江戸時代後期の浮世絵師である葛飾北斎が描いた「富嶽三十六景」。ご存知、見る場所やタイミングによって千変万化の表情を見せる富士山を描き出すという壮大な浮世絵版画シ...
目次

「駿州大野新田」浮島ヶ原自然公園

2025-7-28

快活CLUB「富士吉原店」にて朝シャワー。さっぱりして一日のスタートを切ります。

早朝から移動を開始して「浮島ヶ原自然公園」にやってきました。快活CLUBから車で10分ほどです。

この公園が富嶽三十六景スポットの一つなのですが本日はいつもとは毛色が違います。サンバーに続くこの旅もう一人の相棒を召喚するからです。

ウィ~ン(人力)とトランク部分が開き、ベニヤ板のスロープが敷かれました。

顕れ出でるはマイ自転車。日本一周を成し遂げた歴戦のチャリです。今回はこの自転車を積んで全国を巡るために、わざわざ小屋を積んでいるといっても過言ではありません。

冒頭でも触れたように、今回の遠征は「富嶽三十六景を巡るサイクリング」というテーマで、自転車系ウェブメディア「Global Ride」さんに寄稿するための取材も兼ねています。つまり、自転車はこの旅の要なのです。

そんな旅もいよいよ富士山のお膝元である富士市に突入ということで、連載記事の第一回目の取材を始めるべく、自転車をおろすことになりました。

かつてはパニアバッグ4つに登山ザックを積んだ重装自転車だった相棒も今ではパニアバッグ1つで十分。時の流れを感じます。

自転車はいったん車の横に置いておいて、浮島ヶ原自然公園での撮影を済ませましょう。

この公園にあるこの葦が撮りたかったのです。

東京富士美術館:https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/06266/

今日最初に紹介する富嶽三十六景は「駿州大野新田」。これは東海道の原宿と吉原宿のの間にある新田集落のことを指し、現在も富士市の地名として新田の名前は残っています。そのあたりに存在する沼を含めた湿地帯を「浮島ヶ原」と呼んでいたのでまさに浮島ヶ原自然公園はドンピシャリ。

柴の束を担いだ牛は用意できませんが、湿地越しに富士山を望む光景は今でもこの公園から拝むことができます。ということで朝からやってきたのですが……

この様です。

この遠征、まだ一度もまともに富士山を見られていないのですがいったいどうなっているんですか。高山に雲がかかるのは夏の宿命とはいえそれも大体空気が温まってくる10時以降じゃないですか。最近の富士山はeverytime雲に隠れているのですが!?

これだけ分厚い雲に覆われた富士。待っていたところで晴れる気配もないので次に参ります。ここから久しぶりの自転車セクションだというのに爽やかなスタートが切れないのが残念です泣。

最寄りの駅の「東田子の浦駅」へ

浮島ヶ原自然公園を出たら、まずは最寄りの「東田子の浦駅」へ向かいます。寄稿している記事は「富嶽三十六景を辿るサイクリングコース」というコンセプトで執筆しているため、当然ながらコースの紹介が欠かせません。

そのためにはスタート地点をどこに設定するかが重要になります。遠方から訪れるサイクリストの多くは輪行(自転車を分解して電車で運ぶこと)でアクセスするでしょうから、やはり駅を起点にするのが自然です。そんな理由もあって、まずは東田子の浦駅の写真を押さえておきたかったのです。

東田子の浦駅は目の前に駐車場もありますから車で静岡に来られる方にもとっても便利でしょう(駐車場はネットでの予約が必要)。

駿河湾サイクリング

次はいよいよ、気持ちのいいサイクリングの時間です。東田子の浦駅は海に近く、南へ進むとすぐに湾岸道路へ出られます。ここは車が通らない区間なので、安心してペダルを踏むことができます。もっとも、歩行者も利用している道なので、スピードを出しすぎず安全第一で進みましょう。

幅広くゆとりのある道路

この解放感がたまりません。日本一深い駿河湾(水深約2,500m)を横に潮風を浴びながらのサイクリング。気持ちが良くないはずがありません。

ほんとに、海はこんなにきれいなのに同じ天気でなぜ山の方はあんなことになっているのか汗。

眼福という言葉がぴったりの、抜けるような青空のもとを走るサイクリングコース。少々強めの潮風も、この酷暑のなかではむしろ心地よく感じられます。

写真を見ると、防風林の枝が風にあおられて斜めに伸びているのがわかるでしょう。その姿からも、この地に吹く潮風の力強さが伝わってきます。

「東海道江尻田子の浦略図」二度までも……

気持ちのいい湾岸サイクリングを楽しんだあとは、次なる三十六景ポイントへ。ここには、すぐそばに「東海道江尻田子の浦略図」の切り抜きパネルが設置されており、今回の「富嶽三十六景を辿るサイクリング」というテーマにまさにぴったりの場所。まるで取材のために用意されていたかのようです。

ふじのくに田子の浦みなと公園前

……ところが、肝心の富士山側はあいにくの曇り空。まったく顔を見せてくれません。自分のブログ用なら「まあ、そんな日もあるか」で済ませられますが、寄稿記事となるとこんな撮れ高ではお話になりません。さてどうするか……

ゼロ富士のスタート地点「ふじのくに田子の浦みなと公園」

とりあえず今日は今日できることをやります。すぐそばの「ふじのくに田子の浦みなと公園」を取材しましょう。

ここは、今回の遠征の大目的である「ゼロ富士」のスタート地点に設定されている場所です。ゼロ富士とは、海抜0メートルの地点から富士山の山頂を目指す登山スタイルのこと。富士山本来の高さを、文字どおり足もとから体感するという挑戦です。

私は、富嶽三十六景の全取材を終えたあと、再びここへ戻り、このゼロ富士を実行して旅の締めくくりとする計画を立てています。

小高い丘の上にある解放感にあふれた公園ですね。

ゼロ富士、あるいは「ルート3776」とも呼ばれるチャレンジコースの象徴的な公園ではありますが、シンプルに公園としてのロケーションが抜群。

むしろ、ゼロ富士を目的にここを訪れる人のほうが圧倒的に少数派でしょう。広々とした海沿いの空間に、風と光が気持ちよく抜けていく――それだけで足を止めたくなる場所です。

ゼロ富士をやるときにはこの鐘を鳴らして出発するのでしょうか。多分スタートが早朝すぎて鐘を鳴らすのは遠慮しそうですね。

なんと、海岸へは下りられないようにトラロープが張られていました。ゼロ富士は標高0mから富士山頂まで、3776mをすべて自分の足で登るというロマンあふれる登山スタイル。そのスタートは海抜0mからスタートしましたよという無言の宣言のために海面にタッチするのが習わしなのですが、これではその儀式ができませんね。最近になって海岸に近づけないようになったのでしょうか。

堤防で釣りをしているおっちゃんもいるので入れないことはなさそうですが……禁止されている以上、無理に海面タッチする様を発信すると顰蹙を買いかねません。スタート方法はもう少し何か考えた方がよさそうです。

「富士山ドラゴンタワー」というたいそうな名前の展望台があるのでここからの景色を楽しんだらお昼ご飯にしましょう。

いやもう本当に海は奇麗なのに山が……泣

お昼ご飯は「田子の浦港」の漁協食堂の生しらす丼

公園を出たらすぐ近くの漁協食堂で昼食です。

自転車置き場あり
サイクリストが歓迎されています

ここでは名物の生しらす丼が頂けるということで、自転車で日本一周していたころからマークしていたところ。当時は寄ることができませんでしたが、再び静岡に来る縁があって今回ようやくありつくことができました。

食券を買ったらラムネを飲みながら料理の完成を待ちます。なんて開放的な食堂でしょうね。夏をこれでもかと感じる心地よさ。

そうしてやってきた生しらす丼。生のしらすを食べるのはこれが初めてで、どんな味なのか少し緊張していました。けれど一口食べた瞬間、その不安は吹き飛びます。生魚特有の臭みはまったくなく、しらす本来の甘みと旨味がふわっと口いっぱいに広がります。

これは間違いなく絶品。田子の浦港・漁協食堂の生しらす丼、自信をもっておすすめできます。いいものだ、これは。

河川敷サイクリング

食後は河川敷ゾーンのサイクリング。次の富嶽三十六景スポット「駿州片倉茶園ノ不二」が内陸側にあるので湾岸から離れます。

街中も道路が広くて走りやすいのがありがたい。静岡はサイクリストに優しい街ですね。

海の青が見飽きることに今度は植物の緑。楽しませてくれるわい。

走っていたら空にも面白いものが。普通の飛行機とは違うなあと思ったら「USAF」の文字が見えました。アメリカ空軍……横田基地にでも向かっているのでしょうか。

真昼になると日差しがキツイですがこうして川の流れを見ていると涼しい気持ちになれます。海あり、緑あり、川ありで変化が楽しいサイクリングコースですね。

道の駅「富士川楽座」にて休憩

県道10号沿いの道の駅「富士川楽座」にて休憩タイム。飲み水が大分温くなってきたので中のコンビニで冷凍ボトルのアクエリアスを買います。

富士市ではレンタサイクルをやっているお店を頻繁に見ます。自転車大国といってもいいかもしれません。実際走っていて楽しい道が多いですからね。そして傍らには常に日本一の山富士山がたたずんでいるという絶好のロケーション。私はまだそんな富士山を見ながら走ったことはありませんが怒。

なかなかスケールの大きい道の駅
毛づくろいハトチャン

ベンチで休憩していたらおばちゃんからおにぎり頂きました。熊本から来られたということで、同じ九州民のよしみで優しくしてくれたのでしょう。ありがたくいただきますm(__)m

あまりにも暑いのでアイスも食べたくなりました。道の駅にあるMOW MOW CAFEというところでプレミアムシェーク(いちご)を購入。美味すぎる。即飲み干してクールダウン。

熱を冷ましたら再びライド。

時折「マジかよGoogleマップ!」みたいな道を通らされながら次の富嶽三十六景スポットを目指します。

「駿州片倉茶園ノ不二」富士総合運動公園

富士総合運動公園B駐車場

ということでやってまいりました富士総合運動公園。本日最後の富嶽三十六景スポット「駿州片倉茶園ノ不二」の舞台です。

こうして立て札まで用意されているんですから間違いありません。こういう公式な「富嶽三十六景にゆかりのある地ですよ」と示してくれる案内は取材が楽で助かります。

東京富士美術館:https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/06200/

駿州とは駿河国、すなわち静岡県中部のこと。本図は茶の産地である駿河国らしい一枚です。この絵が実際に描かれた場所は定かではありませんが、大渕地区には「片倉」という地名の名残があり、富士総合運動公園B駐車場からは、作品に描かれている伝法沢と茶畑を思わせる風景を望むことができます。

片倉茶園の正確な所在地が不明なのは、現在この地に「片倉」という地名が存在しないためです。しかし、かつて富士市中野周辺には「片倉」と呼ばれていた地域があったと伝えられています。そのため、この周辺の景観が作品の舞台になったのではないかという説が有力です。

現在の富士総合運動公園内には「大渕片倉古墳」と呼ばれる古墳が残されており、この地名の記憶を今に伝えています。

サイクリング終了!

これにて本日の富嶽三十六景スポットめぐりは終了。再び東田子の浦駅に戻ってサイクリングコースの取材も完了です。

浮島ヶ原自然公園に戻って

ピットイン! 久々のライド、楽しかったです。やはり自転車はいい……夏場は暑さが堪えますが。

少し車を走らせて「鐘庵」という蕎麦屋で夕食。

食事を済ませたら昨日と同じ快活CLUBにて就寝です。ちょっと今の時期、夜でも小屋内が暑すぎる。せっかく宿代が節約できると思って作った小屋ですが毎日車中泊はエアコンなしだと現実的ではないですね……。

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この日の記録は自転車系ウェブメディア「Global Ride」さんに寄稿しています。そちらもぜひご覧ください!

Global Ride
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