2023-7-29
槍ヶ岳を目指す裏銀座縦走に区切りをつけて本日からは北アルプスの難ルートである穂高連峰を歩いていきます。まず立ちはだかるのは北穂高岳前の関門「大キレット」。日本屈指の難所であると同時に登山者憧れの登山道です。油断ならないルートですがここを余裕をもって歩くことができないととてもこの先の領域には入っていけません。穂高を歩けるかの試金石でもあるこの大キレットを本日は攻略していきます。
大キレットとは
大キレットとは南岳と北穂高岳の間にある深く切れ込んだ鞍部のことで、傾斜の強い岩場や、両側が切れ落ちた鋭い岩稜が連続する北アルプスの難所の一つです。特に危険なのが稜線上に着き出た長谷川ピークと呼ばれる岩峰と、ほぼ垂直の岩場になっている飛騨泣きという場所です。
大キレットは図で見るとこのような地形。岩場は下りの方が難しいので飛騨泣きを登りで行ける南岳→北穂高岳だと多少楽には登れる、ハズです。どうあがいても危険な場所であることは変わりませんが(^-^;
自分の登りたい山がどれくらいの技術・体力を必要とするのかを見ることができるグレーディング表が各県で公開されていますが、大キレットの技術的難易度は5段階中最高のEランクです。
穂高に足を踏み入れる前からこの試練。しかしこの先、大キレットも真っ青な登山道もあるので怯んではいられませんね。
恐怖をあおる様なことばかり書き連ねましたが近年は足場や鎖の整備も進んでいるので、注意深く歩けばそこまでトンデモなルートでもない……と大キレットを越えて南岳小屋へやってきた方が言っていました。本当にぃ~?
北アルプス穂高連峰縦走一日目
5:00 南岳小屋
三泊四日の裏銀座縦走を終え、その足で始まった穂高連峰縦走。今日はまず最初の難所である大キレットを越えて北穂高岳へ踏み入ります。
本日もいい天気。陽射しも風も弱い朝のうちに大キレットを攻略したいですね。
展望台と大キレットの分岐。昨日も行きましたが今一度展望台から大キレットの威容を拝んでおきますか。
今からこの急峻な岩場を行くんですね。
大キレットのゴールである北穂高山荘があんなところに……。
あそこへ至る道が付いているなんてここからでは信じられません。
挑むべき壁を目に焼き付けたらいよいよ大キレットへ進入していきます。確かにパッと見恐ろしいところですが正直なところワクワクの方が大きいです。
下り始めから細かい石屑の道です。スリップや落石に注意して下りていきましょう。
すぐに鎖を使っての大きな下降。
大キレットで有名な二本の長い梯子を下って一休み。
初っ端からスゴイ絶壁を下ってきたものです。スリリングなコースですが基本の三点支持を守っていればそこまで怖ろしさは感じませんでしたね。大キレットを歩ける精神力はある様です。この調子で進んでいきましょう。
ひたすらと標高を下げて大キレットの底へ。
長谷川ピークよりもまだまだ高いところにいますね。
「茶」ってなんだ?
と思ったら「北ホ」でした。知らない山がいきなり出てきたかと一瞬ビックリ(^-^;
大キレットの底に到着。ここら辺は岩も安定していますし道幅もあるので比較的安心して歩けます。
ここから長谷川ピークへの登りが始まります。
ヘルメットに360度カメラを着けて撮影してみます。これだけでも頭が重く感じて慣れないと結構ふらつくので要注意。
飛騨側についた石屑の道を進みます。ハイマツの茂る切り立った岩場に立ち、岩稜線上を進んでいくと
6:40 長谷川ピーク
大キレットの核心部、長谷川ピークに到着です。「Hピーク」のペンキがとても特徴的。名前の由来は昭和時代にここから滑落して奇跡的に救助された長谷川君にちなんだものだとか。そんなの名前にしたるなよ……。
振り返れば南岳の大絶壁。よくここまで来たものです。
そしてこちらが飛騨泣きです。どうやって上の北穂高小屋まで行けと……。
飛騨泣きが控えていると長谷川ピークを越えても全然安心できません。とりあえず休憩して体力を回復させます。長谷川ピークはとても狭いので人通りが多いと長居できるところではありませんが、今日は全然人がいないのでちょっとゆっくりさせてもらいましょう。
一息ついたら移動再開。長谷川ピークは北穂川に下る方が危ないですね。
アンカーボルトや足場プレートが設置されているので利用して慎重に下ります。岩稜が飛騨側はバッサリ切れ落ちているので落ちたら奈落。ここら辺は高度感もあり緊張を強いられる区間ですね。
長谷川ピークを下り切り最後の安息地、A沢のコルへ到着。いよいよここから飛騨泣きの登りが始まります。
こんなところを登っていくのですからね。見ているだけでヒヤヒヤします(^-^;
しかしここまで来たら登るしか道はありません。大キレット最大の難所、飛騨泣きへいざ。
油断ならん!
これは核心部ですね。狭い道に連続する鎖場。高所恐怖症は気絶必至。
8:00 飛騨泣き
泣きたいのはこっちですね。゚(゚^ω^゚)゚。
日本屈指の難ルートは伊達ではないようです。
まさに絶壁。岩の魔窟。
足場プレートに鎖にと至れり尽くせり。ここもハイマツで高度感が薄れますが落ちたらノンストップの奈落コースですからね。使えるものは何でも使って安全に渡りましょう。
南岳も遠くなりました。いつの間にか長谷川ピークよりも高いところまで来ています。
槍ヶ岳が見えたらゴールはもうすぐ。長い道のりでした。゚(゚^ω^゚)゚。
絶対たどり着けないでしょう!
と思った北穂高小屋も
もう目の前。ガレ場の急斜面をジグザクと登っていくと
到着!
8:50 北穂高小屋
なんという達成感。゚(゚^ω^゚)゚。
大キレットを突破することができるなんて感動です。
以前、2年前に涸沢カールから北穂高小屋に来た時もかなりの達成感がありましたが、今回はその比ではありませんね。
勝利のCCレモンを頂こうじゃありませんか。難所を越えたあとのジュースは格別です。景色も最高ですし( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
一瞬でガスりましたが。゚(゚^ω^゚)゚。
二年前に来た時もガスっていました。北穂は北アの中でも展望が良い場所の一つに良く上げられるのでもっと楽しみたかったところですが贅沢は言わないでおきましょう。トラブル無く大キレットを渡れただけで十分です。
さて休憩もほどほどに先へ進みますか。今日はまだまだ油断できない行程が残っています。大キレットでビビったなら涸沢下りて上高地をゴールにしようと思っていましたが、この先の穂高を歩く資格はある、かもしれません。緊張感はありましたが恐怖することはなかったので。
目指すは穂高岳山荘。涸沢岳と奥穂高岳に挟まれたすごいところに建っている小屋です。
まずは小屋からすぐの北穂高岳山頂を踏みます。
10:00 北穂高岳
ガス!
ちょっとだけ待ってみますか。さすがに大キレットは少し見たいので。
全部は晴れない……。最近は一度ガスるともうスカッとした空は拝めませんね。
長谷川ピークにめっちゃ人がいるのだけ確認して切り上げます。あそこで混むと怖そうだ……。
さて北穂山頂から奥穂側に目をやるといかにも穂高という感じの岩稜地帯。大キレットを越えたからと言って油断できないのが穂高連峰の縦走です。
というのも北穂高岳~前穂高岳のコースも大キレットと同じ北アルプスに二つしかない技術的難易度Eランクのコースなのです。特に険しいのが北穂高岳~涸沢岳の区間。ここを越えないと今日の宿である穂高岳山荘にはたどり着けません。まだまだ気が抜けませんね。゚(゚^ω^゚)゚。
気を引き締めて行動を開始すると松ナミのコルあたりで人だかりができていました。何かと思ったら
お、今日もあったねライチョウさん!
しかも親子じゃないですかΣ(゚ロ゚;)
親子のライチョウを撮るために登山客が立ち止まっていたのでした。子ライチョウかわいい~!
ライチョウ凛々しい……。
「……」
「ハァ?」
とでも言わんばかりの顔(゚∀゚)
気を引き締めた瞬間、ライチョウとの遭遇で気が緩みました。気を取り直していきます。バイバイライチョウ( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
涸沢・奥穂高の分岐。二年前はここから北穂に登って行ったのでした。
涸沢カール、懐かしいねぇ……。
ここから奥穂高岳を目指すなんて二年前は考えもしませんでした。順調にステップアップできているという事でしょうかね( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )
さあここからが危ないところです。大キレット越えと変わらない集中力を求められる区間。やってやりますとも。
ちなみに今日の宿である穂高岳山荘はもうチラッと見えています( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
左手に涸沢カールを望みながら涸沢岳を目指して慎重に進んでいきます。涸沢カールは本当に美しいですね。私のブログのヘッダーも二年前に撮った涸沢カールなんですよ( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
滑りやすい岩場に打ち込まれた鉄杭を足掛かりに下って行くと
奥壁バンドと呼ばれる難所の始まりです。
岩にしがみつくほどでは無いのですが、下りベースの岩場のトラバースが続き神経がすり減ります。
大キレット越えて安心&達成感を味わっていた後にこれですからね。北穂~涸沢岳も大概な道過ぎる。さすがグレーディングE。ボーっとしていたら命に関わります(^-^;
奥壁バンドの悪路を突破し一安心……というわけにはいかないのが穂高です。
目指す涸沢岳の頂までの道はこれですからね。
飛騨泣き再び?
絶壁じゃないですか。゚(゚^ω^゚)゚。
遠目に人が登っているのを見ると恐ろしい道に見えますね。
最低コルで一休み。行動食を食べて涸沢岳の登りに備えます。
大キレットと同じ難易度だとしてももう結構体力使っていますし、昼の日差しが強くなってきたので条件はより悪いですね。慢心している余裕はありません。全霊をもって攻略するとしましょう。
高度感はめちゃくちゃありますがもう穂高連峰なんて高度感があろうとなかろうとどこで落ちてもほぼ終わりなので気にしないことにしました。
涸沢岳への登りは日本一長く鎖場が続くとまで言われています。確かに鎖だらけ。鉄杭もバシバシ撃ち込まれています。
梯子も多いですね。涸沢岳にかけられた梯子がこれまでで一番緊張感ありました。がけっぷちにかけられているんですもん(。◔‸◔。)
しかしドキドキはしますがそれは高所を歩く際にはあって当然の緊張感。恐怖を感じることなくいいペースで登れていたと思います。それはそれとして体力的には疲れるので「まだつかないのかい!」とは思っていましたが(^-^;
ようやく涸沢岳の稜線に出た時の安心感ったら。゚(゚^ω^゚)゚。
もう景色も最高です!
左のピークが涸沢岳。登頂はもうすぐです。
左が百名山の奥穂高岳。日本第三位の標高の山です( •̀ᴗ•́ )
明日あの山の頂に立つ予定なので今から楽しみです。
そして奥穂から西に続くこの山がーー
ジャンダルム
ある意味で日本一の山です。この山に関するウンチクは明日に取っておきましょうか。まずは涸沢岳のピークを踏みます。
13:15 涸沢岳
無事に涸沢岳へ到着!
そして背面に見えているのが穂高岳山荘です。すごいところに建っているでしょう?( ´艸`)
涸沢岳の標識の前は段差になっているので協力が無いと標識を写して自分の写真を撮るのは難しいですね。
写真を撮ったらもうさっさとテントの受付をしに穂高岳山荘に行くだけなのですが、ここまでの道のりが険しすぎたのでもう少し山頂で浸りたい気分になりました。本当よく頑張りましたよ今日は。
ジャンダルム、カッコいいなぁ……と眺めたり
前穂高の荘厳さに圧倒されたり
今日通った大キレットを見てやり切った気持ちになったり。
素晴らしい山頂だ……。
これほどの達成感に包まれた登山は無いです。挑戦してよかったと心から思いますよ。
ゆったりと過ごしていたら雷鳴が轟いてきたので急いで山荘に向かいます。゚(゚^ω^゚)゚。
北アの雷雲は定時制ですか? 決まった時間に毎日湧いてきて全く……。
穂高岳山荘のテント場はあまり広そうではないですね。
すれ違ったお兄さんに、先に荷物でテント場を確保してから受付をすることを教えてもらいました。
全く広く使えそうなエリアがありません。これはのんびり動き過ぎたかも。まさか穂高岳山荘のテント場がこんなに狭いとは。もう贅沢は言わず空いているところをとにかく押さえました。
後になって気づいたんですけど、このヘリポートにもテント張れたんですよね。゚(゚^ω^゚)゚。
次回に活かします。
テント場を確保したら受付にいきます。ここヤバいですね。テント場で滑落、全然ありえますよ。
13:55 穂高岳山荘
穂高岳山荘のテント場も一人2000円です。
小屋・テント泊の人は雪解け水が無料でもらえます( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
受付ついでにお昼ご飯を注文。穂高岳山荘の担々麺、絶品ですね!
標高3000mでラーメンが食える嬉しさ、たまりません。
それにコーラもつけて。極上の昼食です( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
ラーメン食べて、テント立てて、ゴロゴロしていたらあっという間に夕方。
穂高岳山荘もまた南岳小屋のように展望バッチリの神立地。
夕焼け劇場という夕景のビュースポットまで作られています。
一眼持ち出すのを面倒くさがってスマホ画質ですが十分キレイ。被写体が良すぎるのでカメラの性能が低くても絶景です( •̀ᴗ•́ )
テント場がああいう滑落リスクのある場所ですからカメラもって移動したくないんですよね。ヘリポートに張ればよかった。゚(゚^ω^゚)゚。
夕景を楽しんだら注文していたお弁当を受け取って夕食にします。
飛騨名物の朴葉ずしのお弁当。お値段1200円です。
すごく本格的なお弁当。
魚に鳥天、酢飯。ご馳走ですよ。ボリュームもあって美味しいです。山の上でこれが1200円で食べられるのはとてもお得ですね。
食事を終えて自分のテントに戻ろうと思ったらヘリポートのテント場に人が集まっていたので野次馬根性丸出しで私も行ってみました。夕焼けをみているのかな? 確かにいい景色ですがごった返すほどでも……
ああ! ブロッケンの怪物!
背後からの光が前方の霧で拡散して影周りに光輪ができる現象です。皆さんこれを見ていたんですね( ⑉¯ ꇴ ¯⑉ )
ブロッケンなんて久しぶり。燕岳で以前見たことがありますね。
夕景を楽しんだらテントに戻って寝ます。夏山縦走だと2時起き4時出発を目標に動いているので夕焼けを日没まで楽しんでいるとだいぶ夜更かしになってしまうので。もう少し一日の行程を短くすれば完全に夜になるまで起きていても良いんですけどね。一日の行動時間をできるだけ最大に近づけるべく動いてしまいます。奥駈でそうなってしまったかもしれません。
明日が北アルプス縦走の大一番。早朝に登るであろう奥穂高岳を眺めたら就寝します( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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